最近、わたしは体調が悪い。
生まれつきのアレルギーが悪化して、ここ3ヵ月で何度も病院に行った。
どっさり強い薬を処方され、薬をつける度に情けないような、悲しいような気持ちになっている。
それでも、ちゃんと薬袋に書かれた作用どおりに反応する、自分の身体がうらめしい。
前に一度、科学雑誌でみた血液の拡大写真が、宇宙の風景とそっくりでアッと驚いたことがある。
わたしの身体はわたしのものだけど、何も知らない。
一番近くにある宇宙、カラダ。
わたしの幻想トリップは、江戸時代、小塚原刑場、腑分けの場面へと飛ぶ。
ターヘルアナトミア(解体新書)を片手に、初めて人体のナカミを見た杉田玄白は一体どう思ったのだろう。
南原充士の「解体新書」(p28)は、51世紀の未来に生きる若者が、コンピュータの「歴史ゲーム」で江戸時代の解剖現場を目撃する、追体験を追体験する詩だ。
言葉は入れ子状の渦をたどりながら、客観性という医学の核心へとわたしを導く。
本書は医学と科学の発展というテーマを一つの軸として、ショートショートのような、不思議な物語がつづく。
現実と幻想のあいまにうつらうつらと己の身体の真実を見た。
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